4. アレックス・モールトン/バイシクル インプレッション

キャノンデール ディアドラ レーシング チーム 山本和弘

はじめてモールトンに触れたときの感想は、「思ったよりも軽い」そう思った。


 自宅に送っていただいたのだが、いつも触れている自転車とは自転車の「つくり」自体が大きく違い、組み立てている時は新鮮な気持ちになった。


 あまりにも大きなフロントギア。フランスのエッフェル搭を思わせるフレーム。本当に新鮮だった。そんな時間を過ごし、乗れる状態に調整をしてみた。すると、事前にポジションを伝えていた通りのものになっていて、またがってみると、いつもの自転車となんの変わりもなく、すんなりと体になじむ感覚があった。


 「はやく乗ってみたい」そう思った。そして外で乗ってみた。するとペダルに足をのせて回した瞬間に「ペダリングが軽い」このように感じた。これはホイールが小径であることが1番の要因だと思った。すぐに時速30km台で走り出していた。

しかしレースを想定して考えると、リアのサスペンションの動きはそれほど気にならなかったが、ペダリング時に動くフロントサスペンションの上下運動が気になった。ここで感じたのは、僕は子供の頃からマウンテンバイクに乗っているのでまだ対応できたが、“ロード乗り” には、ものすごい違和感なんだろうなぁ…と感じた。そしてレースを想定して考えていくと気になってくるのがギア比の問題だった。それはリアギアのトップ側11Tが、高速状態になったときに「足りない」と感じたからだ。


 ここまでで感じた変更すべき箇所は、1. フロントサスペンションの動き 2. リアのギア比 だった。それからも乗り込みをしていった。すると、徐々に車体の重心がわかってきた。そして重心がわかってくるとダンシングが可能になってきて「幅の利いた走り」が可能になってきた。途中、トップ側にShimano Capreo9Tのついたリアホイールを送っていただき、スピードに対する対応は万全になった。乗り込みのできる期間は1週間だけだったので可能な限り長い時間を共にした。


 レース1週間前。自転車の調整のためにモールトンを返却した。その時に希望した大きな変更点は、「フロントサスの動き」だった。


 そして本番当日。天候は晴れ。気温も走りやすい温度で、まさに「レース日和」だった。会場に着き、生まれ変わったモールトンと再会。そして、すぐにコースの試走に入った。すると、林氏の工夫によりフロントサスペンションはほぼロック状態になり、無駄な力が逃げないバイクに生まれ変わっていた。そして、リアサスペンションも動きが硬くなっていて、より反応の良いバイクになっていた。「これならイケル!」そう思った。コースを軽く1周し、このときのタイムが9分半くらいだったので、「4時間走ったら目が回るな」と感じた。コースの印象は、意外とアップダウンがあり、下りでは時速60km越えるほどのコースだった。


 はじめの1時間はロードの招待選手の方々が先導してくれたので、その後ろの1番いい位置をキープしながら、レースは進んでいった。そこで感じたのは、モールトンはゆるい一定斜度の登りの “踏み込み” が軽いなぁということ。それを1番感じたのは、コースのホームストレートだった。ここはかなり楽して走ることができた。そして、下りは予想通り時速60kmオーバーで、リアのギア比とサスペンションのセッティングの恩恵を受け、落ち着いて走ることができた。


 アレックス・モールトン博士の言う、「所有する喜びがあり、あらゆる条件下での使用に優れる自転車」という思いを感じとることができた。練習では、長時間乗っても体への負荷が少ない事を感じたし、乗れば乗るだけ体になじむ感覚があった。少ない期間だったがモールトンに対して愛着を感じることができた。


「ゆっくり長く」。この乗り方には最適な自転車だと感じた。

Moku Tune Racing Moulton

レース参戦記

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