5. レースを終えて・・・

キャノンデール ディアドラ レーシング チーム 山本和弘

ここでは、鈴鹿4時間耐久ロードレースに「Moku Tune Racing Moulton」で参戦したレースレポートを書いていきたいと思う。


 僕が今回のレースに出場するきっかけとなったのは、MTBチームの監督秋吉氏の呼びかけからだった。その時は「小径車の世界最高速記録バイクでレースに出てみないか?」という感じでレースに誘われた。正直はじめは戸惑ったが、今回のレースが11月4日と本格的レースシーズンが終わってからのものだったので、参戦を決めた。でも、この時点でバイクがどのようなものか?どれくらい走るものなのか?という疑問だらけで、うまく走れるかという不安の方が多かったように思う。でもレースを走るからには「本気」で走ることが僕のスタイルなので、レースまでの期間を全力で取り組む事を決意した。


 今回の目標はなんだったか?それは、鈴鹿で行われる4時間耐久に出場し、ロードバイククラスに混じって上位ゴール…ということだった。できれば10位以内。それが今回自転車を組んでいただいた林氏からのオーダーだった。しかし僕は出場するからには狙うは優勝のみだった。事前に「Moulton」は高速巡行が可能で、世界最高速を記録したこともあるバイクというのを聞いていた。だから「勝つこと」は不可能な挑戦ではないと感じていた。「いつでも本気」それが僕のスタイルなので、今回の挑戦に本気で臨もうと決めていた。


 実際に「Moulton」に乗ったのはレース2週間前の事である。期間が短いように感じるが、事前に「Moku 2+4」の店長林氏にいつも乗っているバイクのポジションを伝えて、それを忠実に組み上げていただいたので、初めて「Moulton」に乗ったときも違和感なく乗ることができた。そのため、短い準備期間も集中して取り組む事ができた。本番までは体調管理に気を使い、万全の状態でレースができるように、規則正しい生活を心掛けた。


 レース当日、会場に日が昇る前に到着した。会場にはチーム「Moku」の皆さん、そして参加者の方々が多くいて、レースの盛り上がりを感じた。鈴鹿サーキットを走るのは初めてだったので、1周回試走をしてきた。実際に走ってみると、想像以上にアップダウンがあり、F1中継で見るコースとは全く違うものに感じられた。でも、コースを走ってみて「Moulton」と体の一体感を感じ、1つも不安材料が見つからなかった。スタートまでがとても楽しみだった。スタートまではピットエリア内で体のアップをすると同時に、気持ちも高めていった。


 スタートはAM8時03分。スタート位置は、Mokuチームの方々の配慮で最前列に並ぶ事ができた。スタート前、後ろを見ると物凄い参加者の方々の列が見え、コース内は人で溢れかえっていた。スタート1分前。監督の秋吉氏と林氏にハイタッチで健闘を祈り、スタートを待った。そしてF1さながらの10秒前からのカウントでレースがスタートした。


 はじめはロードの招待選手が先導を務めてくれ、安全なペースを保ってくれた。僕はそのすぐ後ろの位置をキープし、最高に良い位置を走り続けた。ゆっくりとしたペースで進み、安全な場所を確保しながら、体調を感じとっていた。「体調は上々!気分は最高!」と良い状態なのが確認できたので、どんどん集中することができた。平坦は約時速40km、下りになると時速60kmくらいでレースは進んでいった。ペースが落ち着いていたのはスタートしてからの30分くらいで、そこから徐々にペースが上がり始めた。そうなると一緒に走っていた集団も徐々に小さくなり始め、「走れる人」のみが残り、ペースは少しづつ速くなっていった。この頃には、1周8分程度で回っていたと思う。今回はロードバイクに混じっての参戦だったので、バイクの特性上少しだけ走り方を変えて走った。


 レースは、1時間までは招待選手が集団をコントロールし進んでいたが、そこからは僕自身も集団の先頭に出て、スピードの維持に協力した。しかし、時々ペースを乱す選手やアタックで集団分裂を試みる選手がいて、そのたびに反応していた。そうなるとペースはどんどん上がっていき、1周7分台で数周していた時、僕の対応できないスピードに上がり、先頭の何人かを逃がしてしまった。必死に2周くらい追いかけたが、どうしようもなかった。その後は力の似たような選手が集団を形成し、前を追っていった。毎周監督から無線で先頭とのタイム差が伝えられていて、集団全員で協力すればまだ追いつけると感じていたので、集団の先頭でどんどんペースを上げていった。そんな中少しでもそのスピードアップに消極的な選手がいたらアタックして、その選手を置き去りにしていった。そのような走り方をしていたのが、レース2時間から3時間の間くらいで、どんどん体力は消耗していった。


 僕の本業はマウンテンバイクだが、競技の特性上、3時間を走りきれるような練習がメインで、そのような走りを体が覚えているのかどうかわからないが、レース時間が3時間を過ぎた辺りからキツクなってきた。それまで1周をなんとも思わなく走れていたのが、それまでと同じ1周が物凄く長く感じたり、残り時間が物凄くあるように感じられてきた。それでも、順位にはこだわりたかったので、アタックがかかるたびに反応して、それでもダメなら自分から仕掛けていった。特に、アタックのかかるポイントが下りきって登りになるポイントが多かったので、かなりエネルギーを使った。そうしているうちに、残り時間が45分・・30分・・20分・・・・。と短くなっていった。大体その頃は1周8分くらいで回っていたので、残り15分で残り2周と計算された。そこからはゴールに向けて集中していった。先頭に何人か逃げている事がわかっていたので、あとはこの集団のトップでゴールすることを目標に残りの時間を走った。


 ソワソワしだす集団内、不安定な走りをする選手…。それらを感じつつ、ラストラップに入っていった。なんだかワクワクしていた。ホームストレートの1番上の部分で一度ペースを上げ、集団を小さくしようと思ったがうまくいかず、そのまま進み、鈴鹿特有のヘアピンを抜けた後の直線でもアタックをした。そこでは、少し集団が小さくなったのがわかったので、このまま最後まで行けば、上位ゴールができると確信した。その後のホームストレート前の長い下りは足を休め、ゴール前で爆発できるようにおとなしくしていた。このときゴール手前の瞬発的なスプリントでは、前でゴールできないと思ったので、早めに仕掛けることを決めていた。そして、ホームストレートに突入した。そこからは、早めではあったが、ロングスパートで加速していった。ゴール前は、多くの参加者でゴチャゴチャになっていて、ワケがわからなかったが、できる限りの力でゴールラインに向った。そして、ゴール。頭が真っ白になった。足がプルプル震えていた。出し切った感があった。


走行時間4時間。走行距離160km強。順位6位。今回「Moulton」に乗ってレースを走ってみて、「Moulton」の可能性を感じたし、魅力を感じることができた。


ー最後に。

今回は、短い間でしたが、「Moulton」に乗って、レースをして、いろんな事を感じとることができました。長い歴史のある「Moulton」に乗れたことを誇りに思うし、魅力を感じました。まだまだ対策をすれば、もっと上のステージにいけると感じました。できることを全力でやったので、後悔はありません。今回、この企画に参加できたことを幸せに思うと同時に、協力していただいたMoku2+4 林氏には感謝します。本当にありがとうございました。


車輪はちっちゃく、かわいいが、たくましく、そして速く走ることができる魅惑の自転車…。

ありがとう Moulton♪


特に、僕のわがままを「かたち」にしてくれた林氏には感謝します。

Moku Tune Racing Moulton

レース参戦記

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