Moku Tune Racing Moulton
MTR-02
加えてMTR02を普段使いもできるように、前後サスペンションを簡単に交換できるように考えました。 フロントフォークは、リジッドフォークに加えてリーディングリンク式サスペンションも20inch用に設計・製作し直しました。 アルミ製リジッドコーンは、簡単に交換できるように純正のラバーコーンスプリングと同じデザインで設計しました。やはりMoultonの真髄はサスペンションだと思っているので組み合わせによっては4通り楽しめるMoultonに仕上げました。
MTR02についてまとめると「クロモリ製のAM-Espritを、17inchから20inchにして、前後サスペンションをリジッドに改造したマシン」。こう書くと簡単ですが、振り返ってみるとMTR02を本格的に進めるようになってから2年強の間、治具の製作に一番時間を費やしていたように思います。一から製作したものの、いざ使ってみると今ひとつ部材が固定しにくかったり使い勝手が悪かったりで、数種類ある治具を製作しては手直しをしてと何度も何度も繰り返しました。
またMTR02を試走する前は、前後サスペンションをリジッドにしたことで、路面の凹凸がゴツゴツとダイレクトに体に伝わってきて、乗り心地が悪くなるだろうなと想像していましたが、試走してみると逆に前後サスペンションを固定したことで、Moultonのトラスフレームの良さを体感することができました。通常は前後サスペンションがしっかり働いているため、トラスフレーム単体の性能までは分かりにくいですが、 以前にサスペンションの付いていないクロモリ製の小径車(ミニベロ)に乗る機会があって、その時にゴツゴツと跳ね返ってくる感じが強く印象に残っていたので、MTR02もMoultonの滑らかさが失われてゴツゴツと跳ね返ってくるだろうと想像していましたが、以外にも期待を裏切られたというか、ゴツゴツとした強い跳ね返りも感じませんでしたし、思いのほか乗り心地が悪くなかったので拍子抜けしました。
さらにMTR02を仕上げるにあたって、17inch、20inchを含めたAlex Moulton Bicycleのフレームジオメトリーを、ほぼ把握することができたのでMoulton Bicycleの設計をさらに深く理解できたように思います。 時間は掛かかりましたが、MTR01と同様に今回も製作して良かったと思いました。
完成から約1年後の2011年12月に鈴鹿のMTR01でお世話になった山本和弘選手に2日間に渡って試走してもらえる機会がありました。初日は MTR02 - SPORTS ver. (リーディングリンク&ラバーコーン)の前後サスペンション仕様で京都東山をツーリングしました。2日目は完全リジッド化した MTR02 - SPRINTt ver. を峠でインプレッションしてもらいました。(京都東山ツーリングの様子はこちら)
ロードとMTBの狭間にいるMoulton。前後サスペンションを巧みに操るMTBプロライダーだからこそ、その中間をしっかりと捉えてインプレッションしてくれるカズ選手からとても興味深い反応が返ってきました。
初日の前後サス付きのSPORTS ver.では、直進でのリアフォークとリアサスペンションを合わせた “しなり” とフロントサスペンションのバランスが良く、路面をなめるような走りが体感できる。Moultonのフレーム構造、サスペンション構造は、路面の追従性が高く、至極細かな凹凸をも吸収して推進力に変えられる。などなどのインプレッションを聞いて、今までMoultonは他の自転車では感じられない “シルキーライド〜絹のような走り〜” が体感できる、速く走るためのサスペンションが搭載されていると散々謳ってきましたが、サスペンションの働きが快適性だけでなく推進力にも繋がっていると改めて聞かされた時、初心に返らされました。
翌日のSPRINT ver.では、峠へ行くまでの街中では全く問題なかった部分が峠で露呈しました。前後サスペンションを完全に固定したことでより明確に感じることが出来たんだと思います。全体の剛性については問題ない。あとは前後サスペンションのバランスが肝になってくると言われました。 ある程度は想定していましたが想定外の想像していなかった箇所も指摘され、さらに探究心が湧き「Moultonって何やねん・・・やっぱり面白いな」と思いました。至極デリケートに反応するMoultonのサスペンションはレースシーンでは短所になるかもしれないけれど長所にもなり得る。課題は山積みですが、だからこそMoultonの持つ潜在能力をもっともっと感じ取りたいと思いました。
MTR01からMTR02の変化でお互いに感じたことや、ロードやMTBとの比較など、時間の許す限り二人で分析し合いながら、時間は掛かるけれどまだまだ試したい事がたくさんあると実感しました。
今回、カズ選手のひと言で印象に残っている言葉があります。「Moultonって温かいんですよね。最新のバイクは軽くて剛性も高くて抜群に高性能なんですけど、たまに乗ってて冷たいと感じるんですよ。だから無性にMoultonに乗りたくなる時があるんです。」
Alex Moulton Bicycleは面白い。まだまだ可能性をたくさん秘めている。
左:新たに製作した20inchサブフォーク。
右:AM-Esprit純正17inchサブフォーク。
前後サスペンションを完全にリジッド化した
MTR02 - SPRINT
前後サスペンション(リーディングリンク&ラバーコーン)を装着したMTR02 - SPORTS
今回、MTR02を製作しながら「MINIのSPRITと一緒やな」と感じていました。MINIのSPRITとは、ボディの全高を低くして、空気抵抗を極限まで抑え、低重心化によるコーナーリングの向上を追求したレースマシンのことをいいます。単体で見ると、一見スタンダードMINIと見間違えてしまいそうですが、よく見るとボディ全体が低い。ただ横半分に切ってつなげているのではなく、 ボディを数十個に切り分けて、各部の高さを切り詰めた後にもう一度つなぎ合わせていく。 上から下からひとつひとつボディやエンジンルームの高さを詰めていくのです。 気の遠くなる作業の連続ですが、この切ったり詰めたりする工程がMTR02と少し似ていたので、思い切ってMTR02を別名「MokuTune-SPRINT」と名付けました。
製作した20inch用リーディングリンク式サスペンションとリジッドフォーク。
純正ラバーコーンに組み替えられるように同じデザインで設計・製作。左)製作したアルミ製リジッドコーン。右)純正ラバーコーン。
MTR01に続いて、MTR02を作ってみました。(その2)
おまけ:MINI Cooper SPRINT
2 : MTR-02 (その2)
◎組み合わせによって4通り楽しめるモールトン。
◎まとめ
◀ 『MTR02-SPRINT ver.』
二日目は、再びリジッドフォークに戻して峠でインプレッションしてもらいました。リアサスペンションもアルミ製リジッドコーンに。こちらも交換しやすいようにA-Headタイプで製作しています。
◀『MTR02-SPORTS ver.』
カズ選手とのツーリング初日は、レース用に完全リジッド化していた『SPRINT』をツーリング用のサスペンションフォークに差し替え、リアサスペンションもラバーコーンに変えて乗ってもらいました。交換しやすいようにA-Headタイプにしたところがミソ。