Moku Tune Racing Moulton

MTR-02

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7)Double Pylon 純正のハイドロラスティック ラバーコーン。

8)Double Pylonのハイドロを無くした MTR01のアルミ製 ソリッド ラバーコーン。

10)Espritのラバー部分をアルミ製に変更したMTR02のアルミ製リジッドコーン。

9)Esprit 純正のソリッド ラバーコーン。

1)AM-Single Pylon他、TSRを除く20inchシリーズで採用されている「リアフォーク 一体型構造」

キャノンデール所属MTBプロライダーの山本和弘選手とMTR01(Moku Tune Racing Moulton)で鈴鹿8時間エンデューロレースに挑戦したのが2007年。その時の結果を基に、より剛性の高いマシンを作るにはどうすればいいか、あれから考えていました。

今回もMTR01と同様にレースマシンとして製作していたのですが、色々なタイミングが合わなかったため、製作当初から前回のようなレースへの参戦は見込めませんでしたが、MTR01で試せなかったところと課題を自分の中でクリアにしたいとMTR02を作りはじめました。ここではベース車両を決めるところから製作過程までをまとめてみました。

3)フレームの部材を手間ひま掛けて直付けしている AM-Speed。

2)17inchシリーズで採用されている「シートチューブ&BBハンガー 一体型構造」

4)ヘッドチューブとシートチューブにぐるりと部材を巻き付けているAM-Esprit。

5)17inchシリーズで採用されているリーディングリンク式サスペンションフォーク。

6)新たに製作した20inchのリジッドフォーク。

AM 17inchシリーズとAM 20inchシリーズで、サスペンションを除いたトラスフレームだけを見ると一見同じように見えますがフレーム構造に大きく異なる点があります。それはボトムブラケット周りです。AM 20inchシリーズは「リアフォーク 一体型構造[画像1]」を採用しています。 この構造は、パワーソースを無駄なく路面に伝達できる、サスペンションを働かせながらペダリングロスを抑えることのできるとても優れた構造を持っています。ところが、強いパワーを短時間、連続的にかけ続けるレースシーンに限っては、たとえリアフォーク フレクシターを MTR-01 のようにソリッドブッシュに改造したとしても、構造上どうしてもその周辺によじれが発生してしまうため、強いパワーを連続的にかけ続けてもよじれない「シートチューブ&BBハンガー 一体型構造[画像2]」17inchシリーズ AM-Speed、AM-Espritから選択することにしました。

ベース車両は決まったものの、ロードバイクとの接戦を想定すると、ホイール径は少しでも大きい方が安定性も巡行速度も上がるため望ましいですが、AM-Espritは17inch。MTR01での結果を考えると20inch以上は必須です。しかしMoulton Bicycle社は現在に至るまで20inch以上のホイールを採用していないため、それ以上(22inch~/451~)のホイールを履かせると見慣れないせいかホイールばかりが目立ってアンバランスに感じてしまう。製作する上で通常ラインナップされているMoultonと並べても違和感を感じさせないように仕上げたいと思っていたので、レース車両といえども全体のバランスも意識して17inch(369)を 20inch(406)へ改造することに決めました。

MTR01の次に組むレースマシンは、ヒルクライム(登坂競技)を想定していました。Moulton Bicycleの素晴らしいサスペンション機能もヒルクライムなどのレースでは不利に働いてしまうため必ずフロントフォークをリジッドにしようと決めていました。そこで、フロントのリーディングリンク式サスペンションフォーク[画像5]を外して、Moultonのデザインに似合ったリジッドフォーク[画像6]を製作。またリアサスペンションには、ラバーコーンスプリングの代わりにアルミ削り出しでリジッドコーンを設計・製作しました。

リアサスペンションについては、MTR01からの変化をたどると、AM-Double Pylon 純正ハイドロラスティック[画像7]から、ハイドロの部分を無くした 一部アルミ製ソリッドラバーコーン[画像8]へ、次のMTR02で AM-Esprit 純正ソリッドラバーコーン[画像9] から、完全なアルミ製リジッドコーン[画像10] へ変化させました。

20inch(406)に改造すると決めたものの、単にアダプターなどを製作して17inchを20inchに改造しただけでは、ホイールの外径差分だけ車高(重心)が上がってしまい、直進性とコーナーリングの安定性が低下するため、車高を上げないように考えなければいけません。また17inchのAM-Espritに 20inchタイヤを装着すれば、ブレーキ本体とタイヤが干渉するため、ブレーキ取付台座(リアフォークブリッジ)の位置とトラスパイプの位置も考える必要がありました。

そうすると、リアフォーク、フロントフォーク、その他諸々を一から作り直すことになるため、ジオメトリー(フレーム形状)も通常のAM-Espritから変更しなければいけません。どうせ作り直すならAM-Espritのジオメトリーに拘らなくてもいいんじゃないかと、AMシリーズの中でもスポーツ走行に向いていて、BBハイト(ボトムブラケット高)が低重心に設計されているAM-Double Pylonのジオメトリーを参考に設計し直しました。またフロントフォーク、リアフォークなどを作り直すのに併せて、フレーム以外のさまざまな治具(※)も、設計する必要がありました。この治具も一度で仕上がるものでもなく、設計→製作を繰り返して、より効率よく使いやすくするために何度も改造していきました。 

(※) 治具:加工物を固定する固定具。おもに機械加工や溶接などに使う。

AM-EspritとMTR02の重心を比較(1)

AM-EspritとMTR02の重心を比較(2)

 MTR01に続いて、MTR02を作ってみました。(その1)

Moulton Bicycleは、分割フレームと非分割フレームの2種類が展開されていますが、それぞれの用途によって分類されています。分割フレームは、携帯性が高く、積載量も多いためシティライド、ロングライド向けであるのに対して、非分割フレームは、剛性が高く、軽量でよりスポーツ走行向けの車両として展開されています。そのことからMTR01と同様にMTR02でも非分割フレームから選ぶことにしました。

17inchシリーズの中では、 AM-Speed と AM-Esprit(2012年生産終了モデル)、 20inchシリーズの中では、AM-Single Pylon と AM-Super Speed が非分割フレームにあたります。

双方クロモリフレームで素材は一緒。その中で大きく異なる点は、フレーム部材をヘッドチューブとシートチューブに巻きつけているか、いないか。AM-Speedは前者で、手間ひま掛けてフレーム部材を直付けしています[画像3]。逆に後者のAM-Espritは製造効率を向上させるためにフレーム部材をぐるりと巻きつけています [画像4]。部材を巻き付けている分、重量増に感じられますが、Moulton Bicycle社はトラスフレームの這わせ方などを工夫して軽量フレームに仕上げています。また部材を巻き付けている分、剛性も高いため、フレーム構造全体の剛性を考えてAM-Espritをベース車両に選びました。

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 2  : MTR-02 (その2)MTR02_2.html
 3 : MTR-02  製作過程MTR02_3.html
  1. 箇条書き項目 1 : MTR-02 (その1)

◎ベース車両は何にするのか。

レースシーンでは剛性が高く軽量であることが最優先事項。

フレームの構造を考える。

◎前後サスペンションをリジッド化(固定)に。

20inch化の問題点(車高、ブレーキ位置など)

◎安定性・巡行速度を考えると大径ホイールが優位。

AM-Speed、AM-Espritどちらを選ぶのか。